あふぇりえいと

2009年1月1日木曜日

大河「篤姫」井伊直弼役・中村梅雀さん

大河「篤姫」井伊直弼役・中村梅雀さん

 滋賀から日本を変えた人物が幕末にいた。彦根藩主で江戸幕府の大老も務めた井伊直弼だ。開国を推し進める一方、安政の大獄を断行して恐れられもした。現在もその功績の評価が分かれることこそ、激動の時代を駆け抜けた証左だろう。情熱たぎる傑物をNHK大河ドラマ「篤姫」で演じた俳優中村梅雀さんが語る。
 彦根藩主の十四男として生まれて部屋住みだったころ、学問や武道、世間を見る目などをとことん磨いて極めたところに、井伊直弼のすごみがある。だからこそ、いざ世の中をつかさどっていく立場になった途端、これまでに培ったものが一気に開花し、発揮された。
 当時の日本にとって何が危機であり、乗り切るために何をすべきか、安政の大獄や日米修好通商条約の締結などを強行するからには自分がどういう目に遭うのか、直弼はわかっていたんじゃないか。日本が異国の文化や科学に制圧されてしまう前に、国内を変革して日本人の手で受け入れていく素地をつくっておくべきだという信念を持っていた。
 「篤姫」では演出上、悪役に振る舞わなければいけない。地元の彦根の方々には「あんなひどい描き方はない」という反感もあったはず。しかし、篤姫と対峙して少しだけ心を通わせた茶室の場面や桜田門外の変の場面まで見た視聴者に、もう一度最初に直弼が登場した頃を振り返ってもらえれば「決してただの悪人ではない」と納得してもらえると思う。何を考えているのか読めない不気味さの奥に未来を見据える眼力を持った人物を意識して演じた。
 暗殺されたとき、直弼は「これで務めは終わった」と潔い気持ちだったんじゃないかな。今後の日本がどうなるのかという一抹の不安を抱く一方、己は日本の将来を決めるにあたって一つの布石を打ったという自負もあった。死んでいくけれども思い残すことはない、と。臨終の際の無言の芝居には、そんな思いを詰め込んだつもりです。

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