あふぇりえいと

2010年1月2日土曜日

先人の発想に生活の知恵--渡邊守順・叡山学院名誉教授

湖国ふしぎ巡り:先人の発想に生活の知恵--渡邊守順・叡山学院名誉教授 /滋賀

 ◇渡邊守順・叡山学院名誉教授

 非現実的な奇跡や神仏、妖怪が登場する民間伝承には、人々の願いや恐怖心、権力者が定めたルールなど、秘められた意味が込められている。特に滋賀の伝承には、朝鮮半島からの渡来人と、かつて広がっていた延暦寺の荘園の存在を見ることができる。

 例えば、湖北地域に広く伝わる天女の伝説は、いずれも渡来人の女性と現地の男性との国際結婚を暗示している。短期間で結婚生活が破たんし、半島からもたらされた梵鐘を置いて出ていくのもその一例。かつて外国との窓口だった日本海に近い湖北は国際都市だったはずで、進んだ技術を持ち、理解できない不思議な力があるように見えた渡来人を天女や竜神などに置き換えたようだ。必ず別れる結末になっていることから、安易な国際結婚への警告が込められているのだろう。伝承を調べる限り、この地を訪れた渡来人は記録にあるよりずっと多かったのではないか。

 また、農業に適した平野が広がる湖東地域には伝承が特に多いが、これは延暦寺の荘園の影響が大きい。管理していたのは全国的なネットワークを持つ僧侶たち。全国の伝説と似たものもあるのはそのせいで、共同体を守るために作った掟を内包している話も多い。例えば「嫁取り橋」(東近江市)は、橋を越えて嫁ごうとする女性を竜神に奪われてしまう話だが、つまり、子供を産む女性を集落から流出させないという意図がある。不倫を戒める伝承や、水質の悪い川を平将門の呪いがかかっているからと避ける伝承も生まれた。

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