墨を擦る 「書の心」養う貴重な一時
さざ波
書の世界では、〈お姫様のように墨を擦り、お殿様のように書く〉という言葉があるのだそうだ。
机も揺れるほどに硯(すずり)に向かうと墨の粒子が粗くなる。そうならないよう優しく。ひとたび書き始めると思い切りよく、という教えだ。
滋賀書作家協会理事長の橋本烽玉さん(77)から聞いた。
書道といえば、筆づかいにばかりに目が向きがちだが、「墨を擦る」のも大切な過程なのだという。
橋本さんは20歳の頃、擦った墨がドロドロになるため、京都の文房四宝店に相談した。実際に墨を擦ってみせると、高齢の店主からたしなめられた。「若気の至りや」と。急ぐあまり、腕に力を込めていたのだ。
以来、加える力は手の重みだけ。墨に練り込まれた香がほのかに漂い、その間に気持ちを静める。筆を取る前に、書風や字の造形を思い浮かべる。書いた作品を眺めながら、反省も繰り返す。
米大リーグ、マリナーズのイチロー選手は打席に入る前、屈伸や背筋を伸ばすストレッチを欠かさないという。〈筋肉をリラックスさせるために必要ですからね〉と、「イチローイズム」(石田雄太著、集英社文庫)で語っている。
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