名古屋出身の北村篤士さん(38)は、京都の有名料亭で料理修業中に出会った女性と結婚した。だが婿入り先の家業を継ぐかどうかは半年悩んだ。1619年創業、17代続くふなずし専門店だったのだ。
琵琶湖の西岸、高島市。黒ずんだ板壁と瓦屋根の古い街並みに「
だがそこは料理人。口にして即座に理解した。「いろんな味が凝縮された、えもいわれぬ深いうまみがある」。18代目になった今では、もちろん、においにも慣れっこだ。
篤士さんが重しを外し、木おけのふたを開けた。淡く黄みがかったペースト状のご飯を手でかき分けて、ふなずしを丁寧に取り出していく。
ふなずしは、魚を塩と飯で乳酸発酵させた、なれずしの一種。使うのは琵琶湖の固有種ニゴロブナだけ。春に捕れた子持ちのメスを塩漬けすること2年、飯に漬け込んでさらに1年。実に3年がかりで作られる。
すしの原型といわれるが、姿は江戸前の握りずしには似ても似つかない。では味は? ツンとしたにおいに一瞬ひるむが、だいだい色の卵はカラスミにも似た濃厚な味。しっぽの方は身が締まっていて、酸味が後を引く。勧められた地酒によく合う。
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